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大腿骨頚部骨折

  大腿骨頚部骨折;内側骨折・外側(転子部)骨折

 大腿骨頸部骨折はその骨折線の部位によって(骨の折れ方によって)、関節包内に骨折線がある内側型とそれより末梢の転子部に位置する外側型があります。治療方法が異なるためここでは内側型と外側型の呼称で区別します。(図32)

  (図32)

   

 

1.症  状
1)股関節の疼痛。
2)関節運動時や荷重時の痛み。

 

2.検  査
1)エックス線検査;
   骨折の型や転位の程度がわかる
 

2)MRI

   X線写真だけではわからない、骨折線や骨内出血が鮮明に描出されます。不全骨折など

   ではその診断に有用です

 

3.治療および病気について
 まずこの骨折は高齢者の骨粗鬆症の患者に多いのが特徴です。多くの合併症を併せ持つ高齢者では手術してもその成績は悪く、寝たきりの原因になっています。ここでは60歳以上の高齢者を対象に話を進めていくこととします。
 この骨折は糖尿病、心臓疾患、脳血管疾患、また整形外科的には骨粗鬆症、腰部脊柱管狭窄症、変形性膝関節症などの基礎疾患を有している患者が軽微な外力(たいした怪我ではない)で受傷しているケースがほとんどです。少しでも臥床期間を短縮することが、寝たきりにならないための治療戦略になります。したがって診断がつけばできるだけ早く手術をして、できるだけ早く離床、歩行訓練を再開すべきです。治療は早期の手術療法が基本となります。
 手術は骨頭を養っている血流の関係で骨癒合しやすい外側型と骨癒合しにくく治療後骨頭壊死(骨が死んで潰れてくる)をきたす恐れのある内側型に区別します。歩行能力の早期獲得が目的であれば、受傷後できるだけ早期に手術をします。内側型では転位の少ない症例はpin固定による骨接合を目指します(図33)。転位が大きければ人工骨頭に置換します(図34)。一方外側型では全例に観血的骨接合術の適応があります(図35)。どの治療法を選択しても手術後早期に全荷重歩行できる治療であることが必要です。ただし重篤な全身合併症をもち、術後歩行の見込みがない内側型では車椅子の生活を選択する場合があります。外側型は術後歩行の見込みが無い患者であっても除痛目的(痛みをとってあげて安楽に暮らせるよう)に早期に手術をおこない、痛み無く離床に持っていく考えが一般的です。
 また最近骨粗鬆患者の骨折が多くなり、初診時のエックス線検査 では診断できない様な骨折や骨頭下不全骨折(要するに折れているのかいないのかはっきりしないのに最終的には潰れてくる骨折)などが多々あります。また明らかな誘因すらない場合もあります。したがって初回のX-p検査で骨折を否定された場合でも、股関節の運動痛や歩行時痛が続く場合には、MRI検査などで早期に確定診断をつけることが大切です。

 

(図33)Pin固定

(図34)人工骨頭置換術

 

(図35)観血的骨接合術

 

 

4.薬剤について
 痛みの程度によって消炎鎮痛剤を処方します。治療リハビリが終了すれば、骨粗鬆症の治療を長期計画でしっかり行うことが重要です。